〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 日 常 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「ボクたちだけになっちゃったね・・・」 「そう言うお前は、帰らないのか?」 「だって、夜が怖いもん」 辺りは夕焼けの紅から夕闇の藍に変わっていた。 あゆはひしっと祐一に付いてくる。 商店街の人たちもまばらだった。家に帰る途中・・・ 「祐一?あゆちゃん?」 名雪だった。 「どうしたのこんなところで?」 「いや、学校帰りの寄り道だ。お前こそどうした?」 「いいね祐一は気楽で・・・私は、部活」 「ご苦労さん。一緒に、帰るか?」 「・・・うん」 あゆと名雪に挟まれて苦しかったが、 その温もりは冷えた夜に暖かった。 家までの道、他愛ない話でおれたちは盛り上がった。 「あと、0.00001秒早かったら記録更新なんだけどね・・・」 「ってお前のところは何秒台まで計ってるんだよ」 「名雪さんって、足速いの?」 名雪が素早く移動するところなんて想像できない。 頑張ってるのは認めるのだが・・・ 「ボク、足遅いから尊敬だよ」 「お前、足速いじゃないか」 「え、ホント祐一くん!?」 「食い逃げで」 「もうそのネタはいいんだよ」 「祐一とあゆちゃん、仲がいいね」 「こいつは突っ込みやすいんだ」 「ボクそんなに悪いこと言ってないもん」 「食い逃げのくせに」 「うぐぅ〜!祐一くん意地悪だよ!」 隣で名雪は楽しそうに笑っていた。 「じゃぁおれたちはこれで」 家に着いたおれと名雪は、あゆに分かれを告げた。 「迷子にならずにちゃんと帰れよ」 「ボク子供じゃないもん!」 そうじゃなくて、着いてきただけで帰り道覚えてないとかやめろよって意味だよ。 「おやすみ、あゆちゃん」 「おやすみなさい〜、祐一くん、名雪さん」 「祐一、早く家に入ろ、寒いよ」 「ああ」 ガチャ、家の玄関を開けて中に入ったら、ぽかぽか暖かく、美味しそうな匂いがしてきた。 「ただいまー」 「おかえりなさい。今日は2人とも遅かったのね」 秋子さんが暖かく出迎えてくれた。 「部活だよ」 名雪が言う。 「部活です」 おれも便乗して言ってみた。 「祐一は帰宅部だよ。今まであゆちゃんと遊んでたくせに」 「部活です」 「もういいよ・・・」 名雪は疲れたように言った。 「2人ともお腹空いたでしょう、ご飯もうすぐですからもう少し待ってて下さいね」 「真琴はどうしました?」 「部屋に居ると思いますけど、ご飯になったらすぐ来ますよ」 秋子さんは笑顔で言った。一人くらい食事代が増えたってどうと言うことはないそれどころか、 自分の子供がもう一人できてうれしいと言ったぐらいの塩梅だった。 「私、部屋に戻って着替えてくるね」 「覗いていいか?」 「いいよ」 「ちょっと待て」 おれは危うく本気で覗くところだった。 なんか、ダメといわれたら覗きたくなるが、いいよと言われたら逆に覗きたくなくなる。 くそ、名雪に心理作戦でいっぱい取られた感じで何となく悔しい。 馬鹿なこと考えてないでおれも着替えて秋子さんの暖かい夕食を食べに行くとしよう。 部屋を出ると真琴にばったり会った。 「何よー」 まだ何も言ってません。 「真琴、今日お前どうしてた?」 「ん?朝起きてー、バイト行ってー、秋子さんとお買い物行ってー、家帰って漫画読んでた」 夜中おれを襲撃してんのに、いつ寝てんだこいつは?と言うか、眠くならないのか。 まぁ一日中食って遊んで寝るよりは少しでも何かの役に立てればいいだろう。 となるとおれは・・・ただの居候か。秋子さんに申し訳ないな。 ただそう言う思いが秋子さんにばれると、むしろゆっくりしてくれと言われるので お言葉に甘えることにしている。なんだかな・・・ 「今日の夕飯はクリームシチューですよ。お代わりもありますから、どんどん食べて下さいね」 「美味しそう〜いただきま〜す」 名雪は部活でお腹が減ったのかたくさん食べている。 真琴も、今日は疲れたのか、わーいとはしゃぎながらたくさん食べている。 途中、おれのも奪うくらいの勢いだ。 「真琴、お代わりあるから、祐一さんのを取っちゃダメよ」 真琴と箸で喧嘩しそうな感じだったが、秋子さんの手前(でなくてもそうだが)行儀悪いので止めた。 下では、ぴろもミルクをぺろぺろなめている。 あらかた食事も片付いた頃には、みんな満足していたようだった。 「みんなたくさん食べてくれて私も嬉しいわ」 秋子さんは頬に手を当てて満足げだった。 「私、少し休むね」 名雪はそう言ってぴろを抱きかかえてリビングのソファに座った。 真琴は漫画の続き読んでこよーっと と言って部屋に戻っていった。 秋子さんは食器の後片付けをしていた。後でお風呂も入ってくるといいですよ、と言ってくれた。 秋子さんには本当に感謝している。 「おれも少し休みますね」 おれも名雪の隣に座ってテレビを見ながら一休みした。 「ねー祐一、今日はあゆちゃんと何してたの?」 「ちなみにあゆだけじゃないぞ」 「祐一、人気者なんだ」 「そうだ、羨ましいか」 「私も行きたかったよ・・・ぐすっ」 その、何と言うか、名雪は泣いている。 その事情は名雪の手の中で無駄ににゃーにゃー言っているぴろのせい(?)なのはわかってるが 泣きながら言われるとこっちが何か悪い事をしたみたいで誤解してしまう。 「おれちょっと出かけてくるな」 「うん、気をつけてね」 夜の校舎は冷え切っている。 扉も窓も、凍り付いてるかのようだ。 この広い中、不思議な気配・雰囲気を漂わせている。 その中にいつも、舞は佇んでいるのだ。・・・と言いたかったのだが・・・ 「あれっ、佐裕理さん、何でここに・・・舞は?」 「あはは、舞は風邪だそうです」 「って昼にバリバリ元気そうに廊下歩いてたじゃないか」 「帰ってから体冷えちゃったそうです」 「あいつ、佐裕理さんにもろ気を使ったな・・・大体あいつが風邪を引くわけがない」 「と言う訳で、今夜は佐裕理が祐一さんを独り占めですねっ」 「独占禁止法発動するぞ。しかし佐裕理さんよくこんな夜に家を出られたね。 親は怒らなかったの?」 「黙って出てきちゃいました」 「お、怒られないんですか?」 「最初はもの凄く怒られましたけど、最近は呆れちゃってるみたいです」 これは、こっちがあははって感じだ。 「この、夜中に見つからないかって言うドキドキがたまりませんよね」 「そ、そう、ですか?」 なんだかいつも舞に腰を抜かされてきたけど、 佐裕理さんは佐裕理さんでかなり手強い感じがする。 「でも、祐一さんが一緒だから大丈夫です」 そう言って佐裕理さんは腕にしがみ付いてくる。 いつぞやの魔物は舞が退治してからもう居ない。あれ以来、舞と魔物は心身ともに一心同体だ。 舞が目を光らせてチョップしてきそうな気がして、魔物以来久々の怖さと緊張感を味わったような気がする。 魔物との戦いがなくなってからおれと舞と佐裕理さんはこの夜の校舎で落ち合うことになっていた。 戦いは終わったのですることは無い。とすると何をするのかと思いきや佐裕理さんが、 『夜の校舎を3人で散歩するのはどうでしょうかっ?』 と言ってきたので仕方なくそうすることに、今日は舞が気を使ってるのかいないが、 他愛ない話は夜の校舎に響いた。いけない事をやっているので、宿泊の先生にばれていないかちょっと怖い。 転校早々問題児にはなりたくなかった。 「この緊張感がたまらないんですよ〜っ」 佐裕理さん、マジでカンベンして下さい。おれ、耐えられません。 すると佐裕理さんも昼の出来事で疲れたのか眠そうだ。 今日はおとなしく帰ることにした。舞の顔が見れなかったのは残念だが。 と思ったら帰り道に舞が待ち伏せていた。 ちょっと焦った。房事を覗き見られた気分だ。って、違う! 「なんでお前来なかったんだよ」 「佐裕理が・・・祐一と居たそうだったから」 「佐裕理さんは、おれだけじゃなく舞、お前も合わせて3人で居たいことを望んでいるよ。 そしておれも、お前が居て欲しいと思ってるから」 普通の女性に言うならこんな気恥ずかしい事はないが、舞に対しては、真面目なことを言っても恥ずかしくなかった。 舞の気が少しでも楽になってくれるのなら。 「・・・ありがとう」 「今日は帰れよ、また明日な」 おれも帰って風呂に入るとするか。 家の玄関を開けると名雪がパジャマ姿で濡れたロングのストレートの髪をバスタオルで拭いていた。 「あ、祐一、お帰り。お風呂沸いてるよ」 「ああ」 通りすがるとき、イチゴの匂いのするシャンプーの香りがした。 いい香りに誘惑されそうな気分だ。 おれも風呂にゆっくり浸かるとしよう。 ・・・ 「いい風呂だった〜」 風呂から出て髪を乾かすと、おれは自分の部屋で漫画を読んだり雑誌を読んだり音楽を聴いたりラジオを聴いたりした。 それで少し経ってから、勉強道具を持って名雪の部屋をノックした。 コンコン 「はーい」 「おれだよ」 「祐一?」 ガチャ 「どうしたの?こんな時間に・・・」 名雪は眠たそうな目をしていた。中を見ると床の机に勉強道具がちらばっている。 復習してるようだった。感心感心。じゃなくて。 「最近授業が全然わかんないんだよ。真琴のせいでろくに寝てないから朝眠くなっちまって」 「それじゃぁ余計早く寝なきゃダメじゃない・・・」 名雪はあくびをした。心底眠そうだ。 「だから、名雪に勉強教えてもらおうと思ってな」 「え?」 名雪の眠たそうな目が止まった。おれの言った言葉が意外だったらしい。 「名雪が悪くなければ勉強教えてもらいたかったんだけど・・・眠いなら無理しなくていいぞ」 「そんなことないよ、全然OKだよ」 さっきとは全然違った目で、はっきりしていた。 「私、祐一と勉強した方が楽しいし、よく覚えるもん」 「悪いな、邪魔しちゃって」 と言うことで早速勉強に入る。と言うか、わからなくて名雪のノートほとんどそのまんま写しだ。 その内普段寝てないせいもあって、名雪より早く眠たくなってしまった。 「祐一、寝ちゃダメだよ」 「うー、佐裕理さーん・・・」 「祐一、寝ぼけてる?」 「いや、そんな事は無いぞ・・・」 「今日の晩御飯、何だった?」 「ぴろ」 「祐一!寝ちゃダメだよ」 「ぐー・・・」 「ハリセンボン飲ますよ」 「どうぞご自由に・・・」 「じゃぁ・・・」 ・・・ 「ごぼぼぼぼ!」 「あ、祐一起きた」 「お前おれをころす気かっ!」 名雪はペットボトルの中のジュースを無理やりおれの口の中に突っ込んだ。 待てよ、なんか量が少ないぞ、新品ではない。もしかしてこれって・・・ まぁ従兄弟だし、気にしないことにするか。 さっぱり目が覚めたところで勉強を再開したが、やはりしばらく経って寝てしまった。 「祐一、私より早く寝ちゃった・・・どうしよう・・・」 「おやすみなさいー・・・」 名雪の声が聞こえた気がするが、おれはそのまま夢の中に落ちた。 一方その頃、真琴が夜中に起きていて祐一襲撃の準備をしていた。 「いっしっし、この冷たいリンゴジュースをかけて風邪を引かせてやるんだから!」 真琴は祐一の部屋をゆっくり空け、ベッドに向かってそれを零そうとした、が 肝心の祐一がいなかった。 「あれ・・・?アイツどこに行ったんだろう・・・」 真琴はいたずらようの『それ』を持ち歩きながら祐一を探した。 今度はこんな時間にまたお出かけしたのかなぁ?逃げたかーっ!? そう思って冷たい廊下の中居ない祐一を探す・・・寒いよ・・・。 ふと気付くと名雪の部屋のドアが少し開いていた。 ちょーっとごめんねーと中を見ると・・・ 「わあああああーーーー」 「どわぁっ!何だ何だ何だ!?」 祐一は飛び起きた。 「ん〜どうしたの〜・・・?」 名雪も起きたらしい。こう言う時はすぐ起きる。・・・? ん? 「え?」 なんでおれが名雪のベッドで名雪と寝てるんだ? 「こんな夜中に、何の騒ぎです?」 秋子さんが上がってきた。名雪の部屋のドアのすぐ側でへたり込む真琴に話しかけている。 「ゆ、祐一が名雪と一緒に寝てるーーー!!!」 「ち、違う!これは何かの間違いだ!全く身に覚えが無い!おれは無罪だ!」 「まぁまぁ・・・」 秋子さんは驚いたという風な感じでおれを見ている。 「秋子さん!祐一が、祐一が・・・!」 真琴は慌てふためいている。しかし秋子さんは 「これからも名雪をよろしくお願いしますね」 と冗談を言って降りていった。 祐一は何ともいえぬ脱力感に襲われた。 「祐一、やっぱりそう言う趣味だったんだ〜」 「違う、と言うかその手に持っているのは何だ」 「えっ、これはっ」 「なるほど・・・いたずらしにおれの部屋に行ったらおれが居なくて探してたって訳か・・・」 「あう〜」 作戦失敗と、真琴は小さくなった。 「今日はもう寝るぞ、残念だったな。また明日だ」 「うー今度こそ見てなさいよぉ〜っ!」 見てろと言われても、寝たいんだが。 バン!と夜中にうるさいドアの閉める音を聞いて、おれはため息をついた。 「はぁ・・・おれって名雪のベッドで寝てたっけ?」 「わたしが運んだんだよ、祐一風邪引いちゃいけないから。重かった」 「はぁ・・・おれ自分の部屋で寝るよ」 「あ、待って」 「ん?」 「えっと、祐一、その・・・今夜だけ一緒に寝て・・・」 「はぁ!?何でおれがお前と一緒に寝なきゃいけないんだよ」 「祐一の体、温かいから・・・」 「ぴろが居るだろ」 「ぴろも良いけど、くしゃみ出るし・・・それに、祐一がいい」 祐一は名雪が一緒に寝たいというのでびっくりしたが、根負けしたのか負けを認めた。 「わかったよ、今夜だけだぞ。おやすみ、名雪・・・」 「おやすみなさい、祐一・・・」 頬を赤らめて、安心したように名雪は眠っていった。 そうしてまた今日と同じような日が明日もその明日も、繰り返されていきますように・・・ =============================================================================================== 凍った時間の続きです。 栞と香里のストーリーを作りたかったんですが・・・ほぼ全キャラ出ちゃったよ煤iぉ と言うか作り始めたのと再開するまでに相当の時間のブランクがあったので、 作りたい内容が初期の頃と脱線していきました(汗) なんか無駄に長いし;; まぁ暖かな目で見てくれると嬉しいです では writing is 2005.1