せっかく好きな人の隣に居れたのに・・・ 大好きな、大好きな人の側に居れたのに・・・ 悲しみから救い出して光をくれた人と居れたのに・・・ ボクは・・・。 ・・・・・・。 ・・・。 ―――――――――――――――――――――――――――           『天使の夢』 ボクはあの日、おっきな木から落ちた。 そして病院に運ばれたけど、7年間も意識不明なんだ。 夢の中で、大好きな人と待ち合わせをしていた場所で、明ける事のない夜を、 いつまでもいつまでも待ち続ける。 その中で見た夢で、ボクは今一度蘇る。 ============================== 『あゆ・・・月宮あゆ・・・』 だれ・・・?ボクの名前を呼ぶのは・・・ あれ・・・?どうしたんだろ・・・ボク・・・ そっか・・・木から落ちて死んじゃったんだ・・・ もっと、あの人と一緒に居たかったのに・・・ 『月宮あゆ・・・起きなさい・・・あの者が帰ってきます・・・ 月宮あゆ・・・あなたの想いは非常に純粋です・・・一度だけチャンスを与えます・・・ あなたは、天使となって蘇るのです・・・。でも、その期間は一ヶ月、やり遂げる事は、 あなたの想う人を幸せにする事です・・・あなたは一度だけ奇跡を起こせます・・・ 過去のあなたが未来のあなたに送った物で・・・その人のためだけに・・・ さぁ行きなさい・・・』 え・・・? ================================= その声が聞こえなくなったときは、ボクは白い雪の中で眠っていた。 でも、ボクの本体は病院の中だった。 でも、今のボクは幽霊じゃない。足もあるし、実体みたい。 どうなってるんだろうね。 ボクがこの世に二人居るみたいだ。 あっちが魂の抜けた本体で死んだように眠っていて、 このボクは魂だけで実体化して存在してるような、そんな感じ。 まるで幽体離脱したような生霊。 えへへ、ちょっと難しい言葉使っちゃった。ボクって頭いいよね。 でも、そんな事は気付いた頃には昔の記憶とともに白い無へと返らされていた・・・。 ・・・ 今日は1月7日。 『今のボク』が誕生した日でもあるんだ。 そして、あの大好きな人が帰ってくる日。 安心して逝けない。 大好きなあの人に、もう一度会うまでは・・・。 雪の森を降りた頃、ボクは何故だか走っていた。 ボク自身わかんないよ。 なんでたいやき持って逃げてるのか。 そしたら、運命の人にぶつかった・・・。 「うぐぅぅ〜・・・痛いよぉ〜・・・」 ボクは鼻を真っ赤にさせていた。 「いきなりぶつかっておいて言う事がそれか。それはこっちの台詞だ」 「・・・祐一・・・くん?」 「え?どうして俺の名前知ってんだ?」 「え?あ、いや、あの、何となくそんな気がしただけ・・・」 「・・・って・・・」 「ちょっと待って!話は後っ!逃げようっ!」 「何だか知らないが、何で俺まで逃げなきゃいけないんだ。お前一人で逃げてこい」 「・・・うぐぅ〜」 一人寂しく直ぐ側のファーストフード店に逃げ込むと、ボクはそのまま身を隠した。 ・・・。 やがて、その危機は遠ざかっていった。 安心して逃げ込ませてもらった店から出ると、そこにはあの人が待ってくれていた。 「さっき走ってきた屋台のオヤジっぽいのが誰かを探してたんだけど、 お前の事探してたんじゃないのか?」 「・・・多分」 「・・・その茶色い袋と何か関係があるんじゃないか?」 「う、ううん!ぜ、全然、そんなこと、ないよ!」 明らかに動揺してしまう。 「・・・で、なんで追いかけられてたんだ?」 「えっと・・・大好きなたい焼き屋さんがあって・・・ たくさん注文したところまでは良かったんだけど・・・」 ・・・。 「気付いたらお財布がなくて・・・でもあまりにお腹が減ってたから・・・ 逃げ出してきちゃったんだよ・・・」 「・・・それって一方的にお前が悪いんじゃないのか?」 ・・・。 「うぐぅ〜!そんなことないもん!」 「悪人!偽善者!」 「うぐう〜!そこまで言わなくてもっ・・・」 「それはそれとして、ちゃんとお金払うまでは手をつけずに返した方がいいんじゃないか?」 「後で、ちゃんとお金を払うもん!」 「まぁ後でちゃんと払うんなら仕方ないか・・・」 「うんっ!だから、冷めないうちに早く食べよっ!」 ボクはそう言い出すと、早速袋の中のたい焼きを取り出して一口食べた。 「うぐう〜、やっぱりたい焼きは焼きたてが一番だねっ」 「それはちゃんとお金を払ったやつが言う台詞だぞ」 「うぐうぐ」 ボクは食べる事に夢中だった。 「ボクは、月宮あゆだよ」 その人の顔を見上げるように、ボクは自己紹介をした。 「そう言えば、何で俺の名前知ってるんだ?昔会った事あったか?」 「え?祐一くんじゃないの?」 「ああ、俺は相沢祐一だ」 「やっぱり・・・祐一くんだよ・・・ボクの事・・・覚えてる・・・?」 「もしかして・・・7年前の・・・あゆ・・・か・・・?」 「祐一くんっ!!」 ボクは恥じらいもなしに祐一くんの胸の中に飛び込んでいた。 「お、おいっ、こんな商店街のど真ん中で・・・」 なんだなんだとその様子を見ていく人、見もせずに道を行く人。 でも、そんな事はボクにはどうでも良かった。 夢の中で待ち続けた人に、7年の時を経て、今また出会えたのだから・・・。 それからのボクは、幸せだった。 普通の人から見て普通の生活でしかない出来事でも、ボクにとっては かけがえのない思い出となっていった。 祐一くんにからかわれたり、一緒にたい焼き食べたり・・・ でも、幸せな時が怖かった。 祐一くんがいつか訊いてきた。 「幸せなら、どうしてそんな悲しそうな顔をするんだ・・・?」 「だって、幸せは永遠じゃないから・・・」 幸せじゃなくなった時が訪れるのが、怖いから・・・。 そう、そのつかの間の幸せはあっという間だった。 他愛ない毎日の中、消された記憶の中からふつふつと何かが蘇るように思い出していく・・・。 ・・・。 そうだ・・・。 ボクは、神様から、記憶の犠牲を引き換えに1ヶ月間天使として好きな人を幸せにする 奇跡を命じられていたんだった・・・。 でも何かが足りない。 そして、ボクが現世に存在している間、祐一くんたちも学校に言っている間、 ボクも『学校』と思っていた場所に行っていたはずなのに、 何故か、祐一くんと会っている時以外の記憶がない。 ボクは存在していてはいけないの? その事を悟ったボクは、自分に時間がないことを悟り、急に思い出した忘れ物を取りに走り出した。 でも、もうすぐ一ヶ月経つ。 残り時間はあまりに少なかった・・・。 でも、一つだけボクにとって救い事があった。 祐一くんが、ボクを好きでいてくれた事。 だから、ボクはまだ存在できる。 再び祐一くんに会えた時、彼はボクの忘れ物を見つけていてくれた。 これは、昔祐一くんがくれた、願いの叶う小さな天使の人形。 今度はボクが天使になる。 そして消える。 祐一くんの幸せ。 「だったら・・・ボクの・・・お願いは・・・」 「ボクの事、忘れて下さいっ・・・!」 ボクは消える。 祐一くんを悲しませちゃダメだ。 だから、ボクなんか最初から居なかったんだって思ってくれれば、悲しむ事もない。 悲しまなければ、幸せで居れるんだ。 そう無理やり決め込んだ。 ・・・でも。 そんな事、できるわけない・・・。 「ホントは・・・ また・・・祐一くんと・・・一緒に・・・たい焼き・・・食べたい・・・よ・・・!」 溢れる涙。 祐一くんがボクの体を覆うように抱きしめてくれていた。 「ボクの体・・・まだ温かいかな・・・?」 まだ『ココ』(この世)に居てもいいのかな・・・? 「当たり前だ」 「良かった・・・・・・・・・」 でも時は酷だった。 ボクは、その場所から跡形もなく、温もりもなく姿を消したのである。 そして、夢の終わる日。 暗闇が明ける朝。 夢に入る扉を開けた時のように、夢の出口の扉を今、・・・ゆっくり・・・開ける・・・。 溶けることのなかった雪が、日溜りで消えてゆくように・・・ 永かった夢が今終わりを告げる。 最後に、本当に最後の最後に、 一つだけの願いを叶えて・・・ ================================== 「・・・」 ゆっくりと、 本当にゆっくりと、忘れていた瞬きを久しぶりにするような気がした。 気がつくと、ボクは白い天井を見上げていた。 病室で寝ている。 「せ、せっ!先生っ!!意識が戻りましたっ!!!」 「な、何っ!?!?」 何事か騒がれている。 でも、ボクはその状況判断で一杯一杯だった。 ・・・。 7年前負った傷は、もう何事もなかったかのように完治していた。 7年も経ったんだから、完治していなかったらそれはそれでおかしいと言うか嫌と言うか。 退院できても、お父さんもお母さんももう居ない。 これからどうすればいいんだろう。しかも今度は夢じゃないし。 お腹減ったな・・・。 夢の中でそうしていたように、ボクは一人またあのベンチであの人を待ち続ける。 夢の中では、祐一くんに会えたけど・・・今度はどうだろう・・・。 ううんっ!信じなきゃだめっ。 ・・・それにしても。 床屋さんに髪を切ってもらって、帽子を被っていても・・・。 髪一杯切られたし、この猫耳帽子すぐ落ちてくるし・・・。 うぐぅ、と困っていると・・・とうとう・・・ 「よお、不審人物者」 「不審人物じゃないよっ」 本当は、最初に言いたかった言葉が、出てこない。 でも、いつも通りでも、よかった。 ちょっと、気になるけど。 「ところで、その髪どうした」 絶対訊かれると思った。 「笑わない?」 「大丈夫、俺は約束は破らない方だ」 「なんか中途半端な言い方だけど・・・うん、約束だよっ」 「床屋さんに行ったら・・・ たくさん切られた」 「わはははっ・・・」 全く遠慮なしに、あの人が笑っていた。 「うぐぅ〜!絶対笑うと思ったけど、酷いよっ」 「悪い悪い。さて、どうでもいいけど、そろそろ行こうか」 「うぐぅ〜どうでもよくないよ〜って、どこに?」 「たい焼き食べに行かないとな」 「もうたい焼きの季節じゃないよ」 「でも秋子さんが作ってくれるらしいぞ」 「えっ!秋子さんたい焼き作れるのっ!?すごいっ!ボクも作れるかなあ」 「墓石?」 「違うよっ!」 「じゃぁ灰?」 「きっと、祐一くんをびっくりさせるぐらいおいしいのを作るよ!」 「それは楽しみだな」 「うんっ」 時は流れていく・・・これから・・・ 「行くぞ、あゆあゆ」 「あゆあゆじゃないもんっ」 いくつもの奇跡を積み重ねながら・・・。 ==================================================================== 最後の終わり方が下手だよ、臭いよ〜(´ノ`lll なんかもう思いつかなかったので適当に終わらせました。