3人に囲まれて山道を歩き続ける。 夏にくっついてるので暑い・・・。 「ご、ごめん、3人ともちょっと離れてくれないかな・・・」 「あっ、ごめんごめん」 倫ちゃんがそう言って、りかぼーやみーちゃんも離れてくれた。 なんか開放感に満ちた気分だ。 しかし体が妙に軽いな・・・ あっ、自分の荷物(弁当とか)忘れた。 「すみません冬香さん、家に荷物置いて来ちゃったんで取って来ますね」 「えっ、弁当ならあげますよ・・・あっ、ちょっと」 僕は暑さで意識が朦朧としているせいか冬香さんが何言ってるかわからずそのまま家まで走り出した。 「姉さん、私、流さんについていきますね」 「じゃぁ私も」 冬香さんと倫ちゃんはその後そう言った。 「仕方ないわね・・・じゃぁ私たちは日陰で一休みしましょう」 み〜ちゃんとりかぼーは早苗さんと日陰で一休みしていた。 はぁ・・・はぁ・・・こんな日に限って忘れものだもんな・・・ いつも手ぶらで歩いてるから・・・ 家に着くと猛ダッシュで部屋の荷物を確認してそれを持つ。 喉がからからだ・・・ 居間に入ろうとして敷居につまずく。 み〜ちゃんじゃないけど、こけてしまった。 しかもちょっと足くじいたかな・・・ 水をがぶがぶ飲んで汗を拭いた後、ゆっくり家を後にして玄関に出ると・・・ 「流さん」 「流っ」 冬香さんと倫ちゃんが居た。 「あれ、2人ともどうしてここに・・・」 「心配して戻ってきたんですよ」 「私は付き添い」 「倫ったら、自分から戻るって言ったのに・・・」 「お、お姉ちゃん!余計なこと言わなくていいの!」 その様子を上から見て、笑った。そして一緒に歩いていく。 「弁当ならまだたくさんあったので、分けられましたよ?」 「あ、いえ、僕のカバンに入ってる弁当も冬香さんたちが作ってくれたものなので、もったいなかったですから」 「流って変なとこで几帳面って言うか」 「そんなことないのよ、流さんは私たちのために戻ってくれたようなものだから」 「はは・・・っつ・・・」 「流、どうしたの?」 「いや、家でちょっとこけちゃって・・・」 「手、貸しましょうか?」 「大丈夫です・・・」 「それに凄い汗・・・被る?」 僕が倫ちゃんにプレゼントした麦藁帽子を渡そうとしてきた。 「大丈夫だよ、倫ちゃん、それ似合ってるよ」 「お姉ちゃんが隣にいるのに・・・」 「倫、良かったわね」 でも冬香さんはわが事のように笑っていた。 「・・・流のおかげだから」 目を隠すように帽子を被って倫ちゃんは言った。 「本当に、流さんも倫も無事で良かったです」 冬香さんが真面目な顔をして、遠くを見るようにこちらに向いて言った。 あの時の事を思い出してるのか。 「今日はそんな事忘れてピクニック楽しみましょう」 僕は笑顔で2人に言った。 「そうだよお姉ちゃん」 倫ちゃんも同意してくれた。 すると冬香さんも元の笑顔に戻った。 さっきの場所まで来ると、早苗さんたちが座って待っていた。 「あ、流ちゃんたちやっと来たわ」 み〜ちゃんとりかぼーは何やらお話してたらしい。 「それじゃぁ行きましょう」 再び合流したところでまた歩き出した。丘の頂上まではもうすぐだ。 「み〜ちゃんたち、何を話してたの?」 「最近、倫ちゃんが流お兄ちゃんにべたべただって教えてたの」 「み〜っ!」 倫ちゃんが恥ずかしそうに注意する。 「って言うかさ、み〜だってこっそり流と仲良くしてんじゃない」 「あっ、それは、その・・・」 ばつが悪そうに困るみ〜ちゃん。その間で目線を左右に動かしているりかぼー。 「流くん、あたしが居ない間にそんなに仲良くなっちゃってたんだ?」 りかぼーが照れながら耳打ちしてきた。 「まぁ・・・」 「やっるぅ!」 恥ずかしいなぁ。僕は無言だった。 そんな話をしながら、目的地に到着した。 真夏は過ぎたとはいえまだ暑いはずなのに、 そこは風がただただ肌に心地よく涼しかった。 近くだと思っていたが、余計な往復をした上徒歩の速度はゆっくりだったので 案外時間がかかってしまった。 まぁすぐ到着してやる事なしにぼーっとして帰るだけと言うのもあれだからいいけど。 「うわぁーこんなところあったんだー!」 りかぼーは初めてだから関心そうに辺りを見渡していた。 早苗さんは適当な日陰にシートを敷いていた。冬香さんも同じく。 み〜ちゃんはりかぼーと丘の上で走ってはしゃいでいた。 倫ちゃんはその様子を、麦藁帽子を被りながら見ている。 時たまこっちを見て微笑んだりして。 僕は、冬香さんたちと一緒に休んでいた。 早苗さんは資料を読んでいる。 こんな時ぐらい休めたらいいのにな・・・と思った。 そしたら書類を仕舞って木を背もたれにして眠ってしまった。疲れてたんだな。 冬香さんといえば、小説を読んでいる。小説・・・? 「冬香さん、また小説を・・・?」 「あ、いえ、これは普通の市販のものですよ」 「どんなお話ですか?」 「えっと・・・恋愛ものです」 「面白そうですね」 そう言うと冬香さんは微笑み、小説に目を戻した。 しばらくりかぼーたちのはしゃぎ回ってる様子を見てたら、早苗さんが起きてきた。 もう昼の時間だろう。お弁当を食べることにした。 中身は普通のサンドイッチやおにぎり、パンだったが、相変わらずバラエティーに富んでる。 食べている時、冬香さんがこちらをじっと見ていた。 「おいしいですか?」 「はい」 冬香さんは、自分の作ったものが何であれ(まともなもの) それを好きな人に食べてもらってるのを見て、その反応を楽しみとしているのだ。 それからは木陰でシートを敷いた上でお弁当を食べながら談笑していた。 倫ちゃん・み〜ちゃん・りかぼーたちは食べ終わった後、丘の上でキャッチボールしたりして追いかけあったりして遊んでいた。 僕と早苗さんと冬香さんはその様子を見て楽しむことにした。 りかぼーもいい年して子供みたいなところあるな。 「ずっと不安でした・・・本当はこんな光景に、憧れていたのかもしれませんね」 冬香さんが唐突にそう言った。本当に優しそうな笑顔で。 「そう・・・あんな愚かなことをして、本当に申し訳ないと思ってます」 「冬香さんのせいじゃないですよ。僕のせいです」 「流さんのせいじゃっ・・・!」 「大丈夫、僕は死にません。あなたたちを、守って行かなければならないから。 今度は無責任に勝手に死んだりしませんよ。あなたたちの未来を見届けたい」 恥ずかしい台詞ではあるが、それは本心からだ。 そう・・・ ////////////////////////////// 真 相 ////////////////////////////// 僕たちは戦争時代に生まれ、僕は彼女らの父・幸信伯父に人体兵器として脳に手術を施され、初めて成功された試験体だった。 僕の両親はすでに亡くなっていた。そして僕は幼い頃、2人の子供の首を千切って殺害していた。 その時その様子を隠れてみていたある子供が、自分も僕のようになりたいと僕に発狂したらしい。 しかし僕は2人の子供を殺害したショックによってその力と記憶を失っていた。 僕が橘高姉妹に出会ったのはその後だった。 そして戦争は終わり、伯父さんにとっては僕を生み出し戦争に勝つことに生甲斐を感じていたらしく、落胆していた。 生甲斐をなくし死にたいと思った伯父さんは死が怖いのでそれに恐怖しなくなるよう狂うことを考えた。 その次の生甲斐が、人間が狂気に満ちた時、どうなるのかと言うものだった。 その試験体は、彼女らの母であり彼の妻と、僕の妹だった。 小説が好きなのに上手く行かない彼女に対して、伯父さんも作家に転じた。伯父さんは学者だったから作家が上手かった。 彼女は嫉妬のあまり発狂したらしい。物語に執着し、それを現実に起こそうとしていた。 伯父さんはそれを見てそこまで狂えないと思った。 そう思うのは、誰かの行動を見たり自分の行動を誰かに見られたり、影響しあうことで色々考えてしまうからだと。 だから、視線を失くすために自分の部屋に閉じこもった。 そしてその試験体に、僕の妹は、10年もの間誰も居ないところに閉じ込められた。 暗い建物に自動で用意される料理を食べ、排泄するだけで育った。 そして10年ぶりに僕は妹に会い、見られた。 人間を見た事ないようなその目は、僕を化け物と訴えていた。 その視線のせいで僕の力は復活してしまった。 その時伯父は、君の妹をこんなにしてすまなかった、殺してくれ、大丈夫、もう恐怖は感じない と、何もかもが上手く行ったかのように気味の悪そうな、やつれた様な笑みを浮かべていた。 でも僕は彼を殺さなかった。そして橘高姉妹に再会した。 そしてある出来事が起こった。発狂した姉妹の母は、娘のあやめさんに小説家になることを求めていたのに、 なってくれないからと、お前さえ志をついでくれたらと、その目の前で自殺した。 さらにある事件が起きた。僕が幼い頃に子供を千切って殺した様子を見ていた子供が中学生へと成長していた。 その子は名前を宮本と言った。その子は2人の女子中学生を、紐で首を絞め殺していた。 彼は僕になりきったつもりで、その過去・未来を日記に綴った。 僕のせいで彼はあんなことをしてしまったのだ。 僕は僕を苦しめたかった。そのために、自分を苦しめるために好きな橘高姉妹を殺した。 倫ちゃん、み〜ちゃん、早苗さん・・・ 姉妹の中のあやめさんだけは、好きだったあやめさんだけは殺さなかった。 そのあやめさんに、自分が犯人だと疑われてしまった。だから自殺した。 自殺する前、僕は一冊の本に自分宛に書くように自分のした事を書いて、ある人に預かってもらった。 それから、そのある人があやめさんの下(もと)に、宮本の日記を差し出したらしい。 あやめさんは、こんなはずではなかったと思った。 2人の少女を殺害し精神病棟に送られた宮本をもう一回発狂させ、さらに脳外科手術を施し、 どこからともなく人を引っ張ってきて橘高幸信になってもらい、 伯父さんの科学で、記憶まで持った姉妹のクローンを作り出し、さらに僕を復活させた。 自殺のショックで力と記憶は失われていた。そして僕はそのまま半死冷凍結状態で保存された。 自分のクローンには冬香と名付けた。小説に使っていた名前だった。 小説に取り付かれたあやめさんは、 姉妹全員が宮本に殺され、自分と僕が幸せになるようにと、 今度こそハッピーエンドを! それだけを望み、同じ出来事をもう一回繰り返そうとした。 そしてある時が来た。季節はあの時と同じ夏。 僕は時を越え見た目全く同じ若さの年齢で生き返され、ある路頭で目を覚ます。 伯父さんの代わりになった伯父さんは、僕を探しにきたが見つけられなかったという。 そしてまた同じ出来事は繰り返された。 あやめさんは、自分の夢を冬香さんに託したが、それを継いでくれず自殺した・・・ 過去の母がそうだったから、それになぞったのだ。 そして2人の少女が、中年になった宮本に、野犬に噛み殺されたかのように死んで・・・ でも唯一あの時と違ったのは、りかぼーの登場と僕と言う存在。 赤坂理佳。りかぼーは、成長した僕の妹がこの村で相手を見つけて、そして貰われた養子だった。 妹の理佳子は、最初狂乱していたと言うが、今はどこかで幸せに暮らしている。 こんな可愛くて元気な娘まで持って、今立派に生きている。 りかぼーは、僕の希望だった。 そして宮本から、倫ちゃん、みーちゃん、早苗さんを守って・・・ 過去の僕が殺した、愛した少女たちを、今の僕が守ったんだ。 伯父さんの代わりをしていた人は橘高家から逃げたが宮本に殺された。 宮本は、橘高家を全滅させようとした際、僕が殺してしまった。 でも、橘高家の計らいで、僕は疑われずに済んだ。 記憶を失っていた僕は、誕生日プレゼントに冬香さんからもらった小説を読んだ。 それは、過去と現実に沿った物語だった。母に無理やり継がれた趣味と言う、哀しいものだった。 それの事を冬香さんに、この丘に来て全てを訊いた。 そしてある人に、僕が忘れた頃返してくれるように預けていた本を、渡された。 全ての記憶を思い出した。力も意識もコントロールできる。 そして、今に至るのだった。