〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 再 会 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 今日は日曜日。親父と別れを告げてからは予定がある。 家の事も片付けなきゃいけないが、今度にしよう。 「渚、汐、今日は久しぶりに会う人がいるんだ」 「それは誰ですか?」 「パパ、ふりん」 5歳児は色んな言葉を覚えようとしてる時期だ。 しかし、そんな言葉は覚えなくていい! 「汐、どこでそんな言葉覚えたんだ」 「多分、私の実家でお父さんとお母さんが何か言ってたんだと思います」 「・・・」 目が点になった。あのオッサンと早苗さんが不倫することは考えられないので、 どうせオッサンが変な事を汐に植えつけたんだろう。 「汐、言っておくが、違うぞ。渚は知ってるけど、汐は知らない人だ」 「あっきーに、知らない人にはついて行ったらダメって言われた」 あのオッサン、中途半端に正しいこと教えてやがるよ。 「だから、今日は残念だけど、渚と家でお留守番してような」 「おーっ」 「ゆっくりしてきてくださいっ」 「ああ」 ちょっと前までなら、誰よりも渚と一日中一緒に居たかった。 いや、今でもそうだが、今日は久しぶりに会う人なんだ。 渚と一緒に居たくないんじゃなくて、渚と居るところを見られたくないとか 渚や汐に会わせたくないと言ったところか・・・ そう思いながら、朝の帰り道に駅前を通りすがると・・・ 「・・・おい岡崎」 「ん?」 「あ!」 「こんにちは〜っ」 俺が何かと振り返って、渚が驚いて、汐が挨拶している。 「・・・」 相手は黙っている。それは・・・ 「春原さんっ」 ・・・あれっ!?今もうそんな時間だっけか!? そう言えば日帰りだとか言ってたな・・・ そう・・・相手は、高校時代の不良悪友、春原陽平。 髪もキンキンだったが今は黒く、地元で仕事をやっている。 休みを貰ったので、久しぶりにこっちに遊びに来たというわけだ。 「ああ、こんにちは」 春原はとりあえずウチの子に挨拶を仕返した。 「ウザイくらい元気そうですねぇ」 「って言うか本当にわざわざ会いに来たんだな」 「あんたが誘ったんでしょ!」 「昔は、大人になっても会いに行くとか言ってたもんな」 「つーかあんたが来いよ!」 「お前が自分で言ったんじゃん」 「お前からも来いよって!」 横で、渚が笑っていた。 「春原さん、元気そうですねっ」 「話には聞いていたけど、本当に渚ちゃんと一緒に居たんだぁ・・・」 「そうだぞ」 「あんたばっかり、幸せそうですねぇ・・・こっちは仕事でバシバシ叩かれてんのに」 春原の泣き顔久しぶりに見た。 「って事はこの子は、お前の子・・・?」 「渚の子だ」 「朋也くんの子でもありますっ」 「って事はお前、渚ちゃんとやっちゃったのっ!?」 ・・・ バキッ!!! とりあえず全力で殴っておいた。 「駅前で大きな声で変な事を叫ぶな」 「会ってからいきなりですかっ」 こっちに走ってきてヤツはそう言った。 そう・・・高校時代も、こんな感じで馬鹿をやっていたんだ。 春原が居なければ、そんな馬鹿をやって笑っていた事もなかった。 「悪い悪い」 「ってあんた今全力だったじゃん!」 横で渚は恥ずかしそうに顔を赤くしている。 「お前が変な事言うからだぞ」 「パパ、お腹空いた」 間を割って汐が足に抱きついてくる。 「何か食べたいものあるか〜?」 「さなえさんのさいきょうのパン」 オッサン!! 「早苗さんの普通のパンだな、もうちょっとしたら食べような。  と言うわけで渚、早苗さんとこで汐にパンを買ってやってくれ、  その後は実家でもウチでもゆっくりしててくれ」 と言うかもう春原と会ってしまったんだからいいんじゃないのかと思ったが、 やっぱり春原と一緒にさせるのは何となくアレだった。 「それでは春原さん、失礼しますっ」 「ばいばい〜、ヘンな人」 「ああ、ウチの子はなんて頭のいい子なんだ」 「あの子、殴っていいですか?」 「てめぇ帰れるまでに五体満足で居れると思うなよ」 「スミマセン」 しかし、適当に会うと決めたもののこれからどうすればいいんだ。 思えば、いつか適当に春原に遊び半分に電話して、 適当に『こっち来い』と言ってみれば時間が取れたから遊びに来ると言われて・・・ 予定は何もなかった。俺たちアホだよな。うん。 「でこれからどうすんだよ」 「しかしお前、あの子の前じゃふにゃふにゃな顔だったな」 「汐か?」 「つーかあんたら早すぎだよ」 「何がだ」 「結婚と、やっちゃうの」 ドゴッ! 今度はそのケツを全力で蹴っておいた。 「痛ぇよてめぇ!やんのか!」 「てめぇそれ以上ヘンな事言うとけちょんけちょんにするぞ」 「事実じゃん!」 「言い方変えろよ!」 「これしかねぇよ!他に何があるんだよ!」 って言うか俺たちは大人になってもこんなくだらない事で喧嘩ができるのか。 でも、それは、俺たちが子供心を忘れていないという意味では、良かったのかもしれない。 「まぁ・・・こっちに来たのは美佐枝さんの様子を見たいのもあるしね」 そう言えば美佐枝さんはどうしただろう。俺もずっとこの街に住んでるけど 買い物してるところさえ見たことない。まだこの町に居るのだろうか。 「美佐枝さんと言えばおっぱいしかないよね」 お前は何が目的なんだ。 「そう言えば芽衣ちゃんは元気か」 「ウザイくらい元気ですねぇ」 「お前の事だ、芽衣ちゃんの尻に敷かれてるんだろう」 「してません」 「芽衣ちゃん、馬鹿やれる友達見つけたのか?」 「さぁね」 「じゃぁお前がその友達になれ」 「僕、あいつの何っすか!?」 「恋人」 「違ぇよ!ってか変態だよそれ!」 「合ってるじゃん」 「つーか何で自分の妹と恋人なんだよ・・・」 「芽衣ちゃん可愛いじゃん、どこがだ?とお前はキョロキョロ見ているうちに惚れてしまうんだ」 「あんたそれ昔も言ってましたねぇ。つーか自分の妹じろじろ見てる時点で末期ですよね」 「そうお前は末期だ」 「僕、帰っていいですか」 「まぁそう言うなよ、変態」 「・・・」 春原は泣いていた。 いつまで経っても俺たちは変わらなかった。 「んでどうすんだよ、岡崎」 春原が聞いてきた。何も決めてなかった。 適当に歩きながら馬鹿の話をするだけで面白い。 高校時代の、サボりをしていた感じがする。懐かしかった。 面白い事を探して2人で歩くその様は、正に高校時代のときと変わらなかった。 「へぇ・・・ここってこんなもんできてたんだ」 小中高と毎日通っていた通学路の横に生い茂る緑の立ち入り禁止地は、 色鮮やかなファミリーレストランに変わっている。 そこをさらに通りすがり、汐の通う保育園も通りすがろうとすると・・・ 「陽平っ!?あんた何でここに居んのっ!?」 「ん?春原?」 春原と同時に振り返ると、驚いて声をかけてきた高い声の持ち主と、 何かを見つけたような落ち着いた物腰の女性が見えた。 「ぉ、杏・・・と、智代!?」 「朋也かっ」 久しぶりの面子に少々面食らった。 「きょ、杏、お前ここで何やってんの?そ、それと・・・」 春原は冷や汗を掻いているようで、その口をカチカチと鳴らせている。 「うるさいぞ、そのカチカチを止めろ」 智代がそう言う。 「つーか、あんたこの格好見て何してるかわかんないの?馬鹿」 早速イタイ言葉が飛び交う。杏らしい。 「そう言えば杏、日曜日は非番じゃないのか?」 「日曜日でも忙しい人が居るのよ。だから子供預けられたりすんのよ」 つーかその口調、直ってないんだな。 藤林杏・・・紫色の長髪と、横髪に結いだリボンが印象的。 性格は、恐ろしいほどに男勝りで、飛び交う言葉も痛いものばかりだ。 「朋也・・・本当に久しぶりだな。元気だったか」 眩しそうに俺を見る彼女は坂上智代。銀髪の長髪にカチューシャをしている。 杏と同じく男勝りで、喧嘩ならその辺の男が束になっても敵わない。 「しばらくは凹んでたけどな・・・今はこの通り」 「で、なんで陽平がここに居んの?」 「お前こそこんなとこで何してんだよ」 「保育園ですることって言ったら決まってるでしょうが」 「え?保育士?マジ?で・・・?」 「そうよ!」 もうそろそろ春原がぶっ飛ばされそうな気がする。 「あっはっはっは!そんな馬鹿な話があったら僕ドラム缶に突っ込まれて海に捨てられてもいいよ!」 杏は徐に保育園の中に入って言ったかと思うと大きな金属の入れ物を持ってきた。 「ま、まさか・・・」 春原がプルプル震えだしました。 その様子を智代は細い目で見ている。 「春原くーん、今から海に行かない?あ、そこの汚い川でも良いわよ、デートしよう♪」 「あ・・・あ・・・すみません」 「おほほほほ」 「あはははは」 ガンッ! ドラム缶は春原に投げつけられた。 「で、あんたは何でここに居んのよ」 「春原気絶してないか?」 「狸寝入りでしょ」 ここで春原に倒れられてはこれからの予定が・・・ しかし今充分に楽しいが。 なんとか春原を起こし応えさせた。 「岡崎に来いと言われて、暇ができたから来ただけだよ」 「あんた今仕事忙しい時でしょ?そんな暇あんの?クビになりたいの?馬鹿じゃない?」 春原号泣です。 「まぁでも久しぶりねぇー。その馬鹿ぶりも」 「うわぁぁぁぁぁんんんん!」 春原は智代に縋り付いていった。すると・・・ 「・・・」 バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキ ッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ! バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ! K.O.! NEW LEACORD! 20HITS! 「久しぶりに見たなぁ、春原が空を綺麗に舞うの」 智代は容赦なく春原を蹴り飛ばしていた。 「すまん、足が気持ちよかったので中々止められなかった」 「で、朋也は何してんの?」 「俺?俺か・・・」 今までの事を軽く話した。 「かつてのウチの部長・・・渚ちゃんね・・・」 「あの子か・・・」 智代、お前より2つも年上なんだから、あの子なんて呼ぶな。 「ところで智代は何してんだよ」 「うん?私か?私は・・・ふっ・・・秘密だ」 ずざっ! 俺はこけた。 「あんた何やってんのよ」 「ふ、秘密とは、如何にも乙女チックだろう」 「そうそう、智代ったらこんな事ばっか言ってんのよ、似合わないわよねぇ」 「で、ホントに何してんだよ」 「・・・この街のために何かしたい。そのために今勉強中だ」 つーことは浪人してたのか・・・。 「弟さんは元気なのか?」 「ああ・・・怪我も、奇跡と言って良いくらいに治った。家族とも上手くやっている」 ああ・・・こいつは・・・ 運が身に付いたら、どんどん良い方向に向かっていくんだろうな・・・ 目標しか見ないで・・・どんな壁も乗り越えて、俺なんか手の届かないところにいってしまうんだろう。 「今のうちにサインくれ」 「?何の話だ?」 「コイツ、また勝手な妄想したわねぇ・・・」 「お前が有名人になったら、お前の無名時代のサインを売ればお金になるかと思って」 「お前は私のものを金にするのか」 キツイ目が向けられた。 「お前なら、もしどんなに忙しくてもサインなんかやらんでもいつでも会ってやる」 「あんた、会ってやるとか言いながら、自分から会いたいんでしょ」 「む、そうとも言うかもな」 あっはははと2人は笑っている。 そう言えば何で智代こんなところに居るんだ? 「智代勉強中なんだろ?何でここに居るんだ?」 「ああ、ちょっと図書館に行って本を借りてきてだな・・・  帰り際に杏に会ったから寄り道と気分転換ついでに話していた」 図書館か・・・ことみはどうしただろうな。 思えば、高校3年になるまでには何の出会いもなかったのに、 渚に会ってから色んな出会いに恵まれたものだ。 いや・・・渚に出会ってからの運命は違ったけど、こいつらは関係ないか。 杏なら2年の時に同じクラスになってるしな・・・ 渚の影響で、そう感じるんだろう。 しかし考えてみれば、今の今まで出会わなかった方が不思議だ。 ちらっと春原を見てみたが、未だに気絶していた。 気持ち良さそうだったのでこいつらと話している最中は眠っててもらうことにした。